土地売買・M&Aの土壌汚染調査|法定と任意の確認順
著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
土地売買・M&Aの土壌汚染調査|法定と任意の確認順
土地売買やM&Aで土壌汚染の確認を検討する時は、法定の調査契機と取引目的の任意の調査を分け、調査結果を何に使うかから依頼条件を整理します。売買やM&Aそのものは法3条・法4条・法5条の調査契機ではありません。ただし、予定する施設廃止や土地の形質変更がある場合は、取引目的の確認とは別に法定調査の可能性を確認します。
根拠・確認日: 本文で扱う土壌汚染対策法と同施行規則の現行版は、最終改正施行日が2026年7月1日です。制度の確認日は2026年9月5日であり、2026年改正の内容そのものは本記事では扱いません。土壌汚染対策法・土壌汚染対策法施行規則

土地売買・M&Aで確認する土壌調査の前提
取引前に行う土壌汚染の確認は、契約のための任意の調査と、法令の契機に基づく法定調査を分けて考えます。取引の予定日だけで調査の種類を決めず、土地の過去の利用、予定する施設廃止や土地の形質変更、調査結果を利用する目的を整理します。
| 確認したい目的 | まず分けること | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 取引の判断材料 | 任意の調査か | 結果を誰が何に使うか |
| 施設廃止の予定 | 法3条の契機があるか | 指定調査機関が必要か |
| 工事や利用変更の予定 | 形質変更に関する確認が必要か | 所管の自治体窓口への確認 |
取引目的の任意の調査
土地売買やM&Aで、土地の利用履歴や汚染の状況を確認するために調査を検討しても、売買やM&A自体が法定調査の契機になるわけではありません。法の調査契機に当たらない任意の調査では、結果を取引判断に使うのか、区域指定の申請を検討するのか、利用計画の検討に使うのかを依頼前に整理します。
任意の調査に、法律上の実施主体の限定は置かれていません。ただし、「任意の調査は誰が行ってもよい」と一般化することはできません。法14条の区域指定申請を考える場合は、知事が公正かつ法3条1項の環境省令で定める方法により行われた調査と認めることが要件です。土壌汚染対策法第14条(2026年9月5日確認)
施設廃止や形質変更がある場合の法定調査
取引に伴って有害物質使用特定施設を廃止する予定がある場合や、土地の形質変更を予定する場合は、取引目的の任意の調査とは別に、法定の契機を確認します。法3条、法4条3項、法5条の法定調査は指定調査機関に行わせる必要があります。個別の土地や予定行為の該当性は、所管の自治体窓口に確認します。土壌汚染対策法第3条・第4条・第5条(2026年9月5日確認)
取引前の調査と法定調査を一つの依頼名にまとめると、調査結果をどの手続きに使うのかが曖昧になります。予定する行為、調査範囲、成果物、希望する判断時期を分けて整理し、法令上の確認と取引上の確認を別の順番で進めます。
売買の対象が土地だけではないM&Aでも、土地に関する確認を行う場合には同じ考え方で整理します。取引の形だけで調査の要否を決めず、土地の利用履歴、施設の使用廃止、今後の形質変更を確認します。法定調査に当たるかという問いと、取引上どこまで確認するかという問いを別に置くことが重要です。

進め方
取引に関係する調査は、調査結果を受け取った後の利用先から逆算して進めます。区域指定の申請を検討するか、取引上の判断に限定するか、今後の土地利用をどう考えるかを分けると、依頼時に伝える条件を整理しやすくなります。
調査結果を何に使うかを先に決める
取引判断に使う場合は、誰が結果を確認するのか、どの時点までに判断が必要か、土地の利用計画があるかを整理します。法令上の届出や調査命令の該当性は、調査会社の一般的な説明だけで結論を出さず、所管の自治体窓口に確認します。契約の解釈や表明の内容は個別事情で変わるため、当サイトでは判断しません。
調査結果の利用目的が途中で変わる場合もあります。例えば、取引判断だけを予定していたものが、区域指定の申請を検討する状況になると、確認すべき条件が変わります。依頼時には、現時点の目的だけでなく、将来の利用や申請を検討する可能性があるかを整理し、必要な確認は自治体窓口に行います。
法14条の区域指定申請を検討する場合
法14条では、法の調査契機に当たらない土地について、土地の所有者等が調査結果に基づき要措置区域または形質変更時要届出区域への指定を申請できます。他の土地所有者等がいる場合は、あらかじめ全員の合意が必要です。土壌汚染対策法第14条・土壌汚染対策法施行規則第54条・第55条(2026年9月5日確認)
知事が、申請に係る調査を公正かつ法3条1項の環境省令で定める方法により行われたものと認めるとき、指定をすることができ、その調査は土壌汚染状況調査とみなされます。申請の可否、所有者等の合意、必要な調査方法の個別判断は、所管の自治体窓口に確認してください。土壌汚染対策法第14条(2026年9月5日確認)
区域指定の申請を検討するかどうかは、取引の相手方や土地の利用計画によって一律には決まりません。申請を前提に調査を進めると決める前に、土地所有者等の関係や、調査結果をどの手続きで使うのかを確認します。調査の目的を依頼先に伝え、申請の要件や手続きの該当性は自治体窓口に確認するという役割分担が必要です。

費用に関して分けて確認すること
費用を確認するときは、調査に要する費用と、区域指定後に必要になる措置に要する費用を同じ請求の話として扱わないことが重要です。調査結果が出ても、直ちに高額な浄化が必要と決まるわけではなく、区域指定、健康被害のおそれ、必要な措置を分けて確認します。
措置費用と調査費用を同じ請求の話にしない
法7条1項の指示を受けた土地の所有者等が実施措置を講じ、汚染がその所有者等以外の者の行為によるものであるときは、指示措置に要する費用の額を上限として、汚染原因者に措置に要した費用を請求できる仕組みがあります。土壌汚染対策法第8条(2026年9月5日確認)
一方で、環境省 中央環境審議会 水環境・土壌農薬部会 土壌制度小委員会の配布資料では、調査費用について汚染原因者への請求を認める規定は法にないと整理されています。調査費用を求める場合は民法上の責任を明らかにして損害賠償を求める必要があるとされており、個別の請求や契約の判断は専門家に確認します。この資料は制度見直しの検討資料であり、将来の改正内容を示すものとしては扱いません。環境省の審議会資料(2026年9月5日確認)
費用について確認する際には、調査の見積と、調査結果後に必要になる可能性がある措置を同じ金額の話にまとめません。区域指定の有無や健康被害のおそれ、必要な措置は個別に確認します。取引当事者の間でどの費用を誰が負担するかは、一般的な制度説明だけで決めず、契約内容と専門家の判断を確認します。

発注時の確認ポイント
発注時には、取引のための確認、法定調査の可能性、区域指定申請の可能性、費用に関する確認を混ぜずに伝えます。調査範囲や成果物だけでなく、調査結果を受け取った後に誰が自治体窓口へ確認するかも、関係者の間で整理します。
個別契約の解釈は専門家へ確認する
売買契約やM&A契約における契約不適合責任、表明保証、費用負担の解釈は、個別の契約内容と事情によって変わります。当サイトは契約解釈や請求の可否を判断しません。土壌汚染対策法の一般的な制度確認と、個別の契約・請求に関する専門家への確認を分けて進めます。
依頼先には、法定か任意か、調査結果の利用目的、土地の所在地、予定する施設廃止や形質変更、希望する成果物と期限を伝えます。調査結果をどのように取引判断へ反映するかは、調査会社への発注条件ではなく、契約当事者と専門家が確認する事項です。条件が不明なまま価格だけを比較しないことも大切です。
取引関係者が多い場合には、調査資料を受け取る人、自治体窓口に確認する人、契約について専門家へ相談する人を分けて整理します。一つの窓口にすべての判断を委ねるのではなく、土壌汚染対策法の制度確認、調査の範囲、個別契約の解釈をそれぞれの確認先へつなぐことで、調査の目的を見失いにくくなります。

よくある質問
売買前の調査は必ず法定調査ですか
売買そのものは法定調査の契機ではありません。施設廃止、土地の形質変更、健康被害のおそれなどの条件と、取引目的の任意の調査を分けて確認します。個別の該当性は所管の自治体窓口に確認してください。土壌汚染対策法第3条・第4条・第5条(2026年9月5日確認)
任意の調査結果で区域指定を申請できますか
土壌汚染対策法第14条には、土地の所有者等が調査結果に基づき指定を申請できる仕組みがあります。他の所有者等がいる場合は全員の合意が必要で、知事が公正かつ法3条1項の環境省令で定める方法により行われた調査と認めることが条件です。土壌汚染対策法第14条(2026年9月5日確認)
調査費用を原因者へ請求できますか
土壌汚染対策法第8条は、一定の措置費用について汚染原因者へ請求できる仕組みを定めています。一方、調査費用について汚染原因者への請求を認める規定は法にありません。個別の契約・請求は専門家に確認してください。土壌汚染対策法第8条・環境省の審議会資料(2026年9月5日確認)
まとめ
土地売買やM&Aでは、取引目的の任意の調査と、施設廃止や土地の形質変更に関わる法定調査を分けて確認します。調査結果を取引判断、区域指定の申請、今後の土地利用のどれに使うかを整理し、法令上の該当性は自治体窓口に、個別契約や請求は専門家に確認します。
調査義務の入口は土壌汚染調査が必要なケース、費用を比べる前提は土壌汚染調査の費用は何で変わるか、法定調査と任意の調査の違いは土壌汚染の法定調査と任意の調査の違いで整理できます。あわせてシーン・事例カテゴリもご覧ください。
出典
- 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)〔e-Gov法令検索〕(laws.e-gov.go.jp)
- 土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)〔e-Gov法令検索〕(laws.e-gov.go.jp)
- 環境省 中央環境審議会 水環境・土壌農薬部会 土壌制度小委員会 配布資料「今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点②」(env.go.jp)
著者・監修
依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表
依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。土壌汚染対策法の調査義務・費用相場・指定調査機関制度について、e-Gov・環境省等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。
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