汚染原因者への費用請求はどうなる?法8条の対象と留保
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
土壌汚染対策法第8条には、汚染の除去等の措置を講じた土地の所有者等が、汚染原因者に対して費用を請求できる仕組みがあります。ただし、どの対応でも直ちに請求できるわけではありません。第7条に基づく指示を受けて行った汚染の除去等の措置であること、原因者に該当するかなどを、資料と条文に沿って確認します。
この記事では金額や負担割合を扱わず、法第8条の請求がどの手続と結び付くかを整理します。土地の売買、賃貸、操業、相続などの事情で結論が変わる権利関係は、一般論だけで決められません。土壌汚染対策法と同施行規則は最終改正施行日が2026年7月1日であり、本文の条文は2026年9月5日に確認しています。
請求の前に整理する法定の枠組み
法第8条の費用請求は、要措置区域の土地の所有者等が、第7条第1項の指示に基づいて汚染の除去等の措置を講じた場合に関係します。請求する側、請求の相手方、措置の根拠、措置を講じた日を分けて整理すると、制度の入口を取り違えにくくなります。

| 確認する点 | 法律上の位置づけ | 資料で確認する内容 |
|---|---|---|
| 土地の区域 | 要措置区域に関する手続 | 区域指定と区域図 |
| 措置の根拠 | 第7条第1項の指示 | 指示書と措置内容 |
| 請求する者 | 土地の所有者等 | 土地との関係を示す資料 |
| 請求の相手方 | 汚染原因者 | 汚染原因に関する資料 |
| 期間 | 第8条第2項の定め | 措置を講じた日 |
第7条の指示と結び付く請求
法第7条第1項は、要措置区域の土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を講ずべきことを指示する仕組みを定めています。法第8条第1項の請求は、この指示に基づいて措置を講じた場合が対象です。区域指定があったこと、調査結果が出たこと、土地利用を変更したことだけで、法第8条の請求要件が満たされるとは言えません。
指示書、区域図、措置に関する資料を保管し、どの指示に基づく対応かを確認します。措置の範囲や内容は個別の指示で異なるため、他の土地の対応例をそのまま当てはめません。行政からの通知を受けたら、通知日、対象地、指示された内容を土地資料と対応させます。
汚染原因者かどうかは資料で確認する
第8条は、汚染原因者に対する請求を定めています。誰が原因者に当たるかは、過去の操業、土地の使用状況、物質の取扱い、契約関係など、個別の事実によって検討されます。土地の現在の所有者、過去の利用者、管理者などの呼び方だけから、原因者かどうかを断定しません。
請求の検討では、土地の履歴、区域指定に関する資料、調査報告書、行政の指示、関係者との契約資料を時系列で整理します。資料に不明な時期や主体がある場合は、その点を留保して専門家に相談します。原因者に関する結論を、調査報告書の名称だけで決めないことが必要です。
対象となる措置と対象外を分ける
法第8条の仕組みを確認するときは、実際に行った対応を一つの「対策」としてまとめず、法第7条第1項の指示との対応を見ます。自主的な調査、土地売買の準備、任意の工事、社内の確認作業などは、名称が似ていても第8条の対象になるかを別に確認します。

指示書と実施内容を対応させる
まず、要措置区域に関する通知と、第7条第1項の指示書を確認します。次に、実施した対応が、指示された汚染の除去等の措置とどのように対応するかを整理します。土地の一部だけで対応した場合、複数の工程が並行した場合、所有者等が途中で変わった場合も、日時と対象地を分けて記録します。
指示の内容は、所在地や区域の状況で異なります。指示書の表現を省略して社内の略称だけで整理すると、後で何に基づく対応だったか追えなくなることがあります。区域図、指示書、実施記録を同じ対象地として確認できる状態に保ちます。
任意の対応を当然に含めない
第8条が対象とするのは、第7条第1項の指示に基づいて講じた汚染の除去等の措置です。土地利用のために行った自主的な調査や工事がある場合でも、それを当然に第8条の請求対象と扱いません。法定の指示との関係を確認し、契約上の請求や別の法的な論点とは分けて検討します。
調査の義務があるか不明な段階では、土壌汚染調査が必要になる主なケースで調査契機を整理し、土地資料をそろえます。制度の入口が異なれば、確認する通知や資料も異なります。
期間と請求権の扱いを確認する
法第8条第2項は、請求権について、措置を講じたときから3年を経過したとき、または汚染原因者が汚染原因者でなくなったときから20年を経過したときのいずれか早い時期までに行使しなければならないと定めています。期間だけを単独で数えるのではなく、どの措置をいつ講じたのかをまず確認します。

起点となる事実を記録する
期間の確認に必要なのは、「いつ頃対応したか」という記憶ではなく、法第7条第1項の指示に基づく措置を講じた日を確認できる資料です。完了の扱い、複数の工程がある場合の整理、原因者が原因者でなくなった時点の判断には、個別の事実関係が関わります。資料を時系列に並べ、不明点を残したまま期間を断定しません。
土地の譲渡や組織変更が関係する場合は、契約書や登記事項、行政通知の対象地を対応させます。請求権の存否や期間計算は法律上の判断を伴うため、早めに弁護士などの専門家へ相談します。所管窓口は制度や通知の確認先ですが、当事者間の権利関係を判断する窓口とは限りません。
請求先への連絡を急がず根拠をそろえる
原因者に連絡する前に、区域指定、指示、措置、土地との関係、原因に関する資料を確認します。事実関係が未確認の段階で、相手方を原因者と決めつけたり、責任を断定したりしません。資料の写し、確認した日、行政からの通知を整理して、専門家へ相談すると論点を共有しやすくなります。
個別の交渉や請求の進め方は、当事者の関係や資料の内容で異なります。この記事は法第8条の制度上の入口を説明するものであり、特定の相手方への請求可否や負担を判断するものではありません。
土地所有者等が行う整理
土地所有者等は、区域指定に関する書面を受け取ったら、対象地と現在の利用状況を確認します。要措置区域かどうか、法第7条の指示があるか、いつどの措置を講じたかを順に確認すると、第8条を検討する資料の不足に気付きやすくなります。

区域の種類を先に確認する
土壌汚染状況調査の結果が基準に適合しない場合、要措置区域または形質変更時要届出区域に指定される仕組みがあります。区域ごとに手続が異なるため、通知と区域図を確認し、どの区域のどの手続が関係するかを整理します。区域の違いは、要措置区域と形質変更時要届出区域の違いでも確認できます。
関係者ごとの資料を一つにしない
所有者等、過去の土地利用者、調査を行った事業者、行政では、保有する資料が異なることがあります。入手元と作成日を記録し、原本と写し、未確認の資料を区別します。調査結果、区域指定、指示、実施記録、契約資料を混ぜずに整理することで、専門家への相談時にも事実関係を説明しやすくなります。
土地の形質変更に伴う届出の扱いが関係する場合は、土壌汚染対策法4条と届出の基本を参照し、別の制度上の届出と第8条の請求を混同しないようにします。
まとめ
法第8条の費用請求は、要措置区域の土地の所有者等が第7条第1項の指示に基づく汚染の除去等の措置を講じた場合に関係します。対象地、区域指定、指示、措置、原因に関する資料、期間を対応させ、任意の対応を当然に含めません。原因者や請求権の判断は個別事情に左右されるため、事実を整理して専門家に相談します。
よくある質問
- Q. 調査をしただけでも法8条で請求できますか
- 調査を行ったことだけで、法第8条の請求対象になるわけではありません。同条は、要措置区域の土地の所有者等が第7条第1項の指示に基づいて汚染の除去等の措置を講じた場合を定めています。調査、任意の対応、指示に基づく措置を分け、行政通知と実施記録で確認します。
- Q. 現在の所有者が原因者に当たりますか
- 現在の所有者であることだけから、汚染原因者に当たるとは判断できません。原因者の判断には、過去の土地利用や汚染原因に関する個別の事実が関係します。名称や立場だけで結論を出さず、土地履歴、調査資料、契約資料を整理して専門家に相談します。
- Q. 期間の数え方はいつからですか
- 法第8条第2項は、措置を講じたときから3年、または汚染原因者が汚染原因者でなくなったときから20年のいずれか早い時期までに請求権を行使しなければならないと定めています。どの日が起点かは措置と原因者に関する事実で確認するため、記録をそろえて個別に検討します。
- Q. 行政に原因者を決めてもらえますか
- 所管窓口では区域指定や指示など、制度上の通知と手続を確認します。一方、当事者間で誰が原因者に当たるか、請求できるかという権利関係は、資料と個別事情を踏まえた法律上の判断が必要です。行政の通知と当事者間の請求を分け、必要に応じて専門家へ相談します。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.土壌汚染対策法(laws.e-gov.go.jp)